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2023年12月3日日曜日

Billie Holiday - Strange fruit

こんばんは、古い音楽をお届けする音楽文章ラジオのお時間がやって参りました。進行は、名久井翔太です。どうぞよろしく。

いよいよ今年も後1ヶ月を切ってしまいました。

あちらこちらでそんなセリフを耳にする季節になってしまいましたな。

…私の記憶が確かならば、今月の13日で、このブログが開設して丸10年を迎える、といった事を言ったような言ってないような。

言った言わないの水掛け論は置いといて。

10周年の時に何をやるかはまだ決まってません。まじでどうしよう泣

何かフッとインスピレーションが湧いてくるのを期待しながら日々を過ごしたいと思います。

では、今日の洋楽和訳のコーナーです。

今日の洋楽

今日はビリー・ホリデイで「奇妙な果実」です。




ルイス・アレン作曲です。1939年のシングルで、ホット100で16位を記録しました。

ビリー・ホリデイこと、エレオノーラ・フェイガン(Eleanora Fagan)は1915年4月7日、メリーランド州ボルチモア生まれのジャズシンガーです。

差別が激しい時代に、黒人へのリンチを歌った「奇妙な果実」が大きな話題を呼んだ、女性ジャズシンガーの一人です。

まだ未成年だった両親(父:クラレンス・ホリデイ、母:サディ・フェイガン)の元に生まれました。両親は結婚しておらず、ジャズギタリストだった父クラレンスは母子を置いて出ていってしまいます。その為、母親の親戚の家を転々とする日々が続きます。エレオノーラは親戚の子から暴力を受けたり、曽祖母との昼寝中に曽祖母がそのまま死亡して、曽祖母の腕に抱かれて寝ていたエレオノーラはPTSDを発症し、しばらく言語障害を患うなど、壮絶な幼少期を過ごしていました。

やがて学校にも通わなくなり、1929年頃からナイトクラブで歌い始めます。この頃にフレッチャー・ヘンダースン楽団のギタリストとして働いていた父親と再会します。男性的な顔立ちのエレオノーラを見て「ビル」と呼んでいた事から、エレオノーラは芸名を「ビリー・ホリデイ」とします。

1933年にコロムビア・レコードのプロデューサー、ジョン・ハモンドに見出され、ベニー・グッドマンとのセッション企画に呼ばれます。歌の才能は認められて、やがてレスター・ヤングやデューク・エリントンなど有名なジャズミュージシャンと共演する事が増えて、ニューヨークで人気が出だしました。

1935年に出したシングル「月光のいたずら」がその年のベストセラーとなりました。やがてカウント・ベイシーアーティ・ショウと共演するようになり、人気歌手となりました。しかし、アーティ・ショウとツアー中に、南部の州のレストランに立ち寄った時、黒人のビリーと白人のアーティとその楽団員が同じホテルやレストランに入れない、という事態が起き、ツアーを途中で切り上げてしまいます。そうです、いわゆるジムクロウ法、黒人差別激しい時代にアメリカに普通にあった法律です。

ニューヨークに戻ったビリーは人種問わず同席できる「カフェ・ソサエティ」の専属歌手として活動します。1939年に若い高校教師ルイス・アレンが作った反リンチ抗議曲「奇妙な果実」と出会い、ビリーの大事なライブのレパートリーに加えられます。

「奇妙な果実」を録音しようとしましたが、コロムビア・レコードはこの曲を拒否してしまいます。コモドア・レコードの主催、ミルト・ゲイブラーの口利きでコモドア・レコードよりリリースされました。

「奇妙な果実」はヒット曲となり、続く1941年に「暗い日曜日」をリリースしこれもヒットさせます。しかしこの頃からビリーは麻薬に手を出して、ライブ中に歌詞を間違えたり、契約を守らないなど、悪いイメージがついてしまいます。そのイメージ払拭の為に、1945年に大掛かりなツアーを決行しますが、ツアー中に母親の訃報が入り、鬱状態になり、アルコール中毒になってしまいます。

心身共にボロボロになり、さらに麻薬不法所持で逮捕されたりと、不運な日々が続きますが、それでも稼ぐ為にツアーを続けなければ行けませんでした。1954年には自身も夢見てたヨーロッパでのツアーを決行します。スイスやデンマーク、スウェーデン、イギリスを含む8カ国を周り、成功させます。

一時はアルコールや麻薬に頼らない生活を送っていましたが、またしても麻薬中毒に陥り逮捕されてしまいます。1959年には肝硬変や腎不全に倒れます。入院中に麻薬を看護師に見つかり逮捕されます。裁判の為に回復を待っていましたが、容体が悪化して、1959年7月17日、44歳で亡くなりました。

歌詞は壮絶な物です。Wikipediaで黒人がリンチされている写真を見ましたが、これが昔普通に行われていた事を考えると恐ろしいです。しかし、目を背けてもいけない人種差別問題です。どの人間も生まれてきて天寿を全うするのです。それを黒人だから黄色人種だからと偏見をもって暴力や自由を奪う事は間違ってると思います。今一度、人間とはどうあるべきかを考える必要があると思います。

では和訳です。

Southern trees bear a strange fruit

Blood on the leaves and blood at the root

Black bodies swinging in the Southern breeze

Strange fruit hanging from the poplar trees


南部の木々に、奇妙な果実が実る。

葉っぱや根っこに血が滴る。

黒い体が南の風に吹かれて揺られている、

ポプラの木に奇妙な果実が実る。


Pastoral scene of the gallant South

The bulging eyes and the twisted mouth

Scent of magnolias sweet and fresh

Then the sudden smell of burning flesh


勇敢な南部で見られるのどかな光景、

目は見開いて、口は歪む。

マグノリアの甘く新鮮な香りが漂い、

すると突然、肉の焼ける匂いが立ち込める。


Here is a fruit for the crows to pluck

For the rain to gather, for the wind to suck

For the sun to rot, for the tree to drop

Here is a strange and bitter crop


ここに、カラスが突っつく果実が実る、

雨曝しになって、風に吹かれ、

日の光で腐り、木々に落ちていく。

そう、ここに奇妙で惨めな作物が実る。


こんな感じです。

今日はこの辺でお時間です。洋楽和訳のリクエスト・感想ございましたらコメントくださいませ。

ではまた。

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