笑ったのは4つのヒット曲の法則、の所で、特に「カノン進行」と「歌詞」の所です。前から知ってはいましたが、改めて見て面白いと思いました。
まずはカノン進行。カノンというのはパッヘルベルというクラシックの作曲家の作品で使われるコード進行です。パッヘルベルのカノン。皆さんもどこかでお聴きになったかと思います。
コード進行は以下の通りです。
C - G/B - Am - Em/G - F - C/E - Dm - G
CとかBはコードの名前なので、習った事が無い方の為に簡単に説明します。
コードというのは3つ以上の音を同時に鳴らした物をいいます。または和音です。
「ド・ミ・ソ」の3つを同時に鳴らすとCメジャー (普通はメジャーの部分は省略、またはCMと書かれます。)というコードが出来ます。Gは「ソ・シ・レ」の3つ。
DmはDマイナーと読みます。Dメジャーは「レ・ファ♯・ラ」ですが、マイナーコードの場合はルート音から数えて三つ目「三度音」が♭、つまり半音下がります。したがって、Dマイナーは「レ・ファ・ラ」となります。
そしてG/BとかEm/Gですが、Gはソの音、Emはミの音がルート音ですが、あえてルートから3つ目の音をルート音、つまり一番低い音として鳴らす事で美しく感じるようになりカノン進行においてはすんなりと一音ずつ下げられます。
どの音が基本の音なのかはCはドから始まる和音、というのを念頭に置くと自然と分かるようになります。
どこまでアルファベットが使われるのかというと。
C=ド 以下略
G=ソ
A=ラ
B=シ
Bまで来たらまたCに戻ります。
おかしいと思った方。かなり音楽を勉強されてる方と思います。なんでドはAじゃなくCから始まるのか。
コードネームにアルファベットを使うのはドイツが発祥です。
オーケストラのチューニング合わせは「ラ」の音に合わせています。
因みにピアノの鍵盤。一番左、つまり一番低い音はラなんです。
後者は別として、それがきっかけでラ=Aになりました。
それが日本にも伝わりましたが、日本にも独自のコードネームが…それはまた別の機会に。
さて、大分長くなりましたのでここらでまたカノン進行のコードを。
C - G/B - Am - Em/G - F - C/E - Dm - G
誰でも聴いた事があるヒット曲の中にはキーは違えど、この法則に則った物がゴマンとある訳です。マキタスポーツさんは以下の曲をカノン進行の曲の一部で紹介しています。
•山下達郎 - クリスマス・イヴ
•松任谷由実 - ひこうき雲
•徳永英明 - 壊れかけのRadio
•大事MANブラザーズバンド - それが大事
•岡本真夜 - TOMORROW
•ZARD - 負けないで
•KAN - 愛は勝つ
この内、KANさんの「愛は勝つ」、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」は「一発屋」の代名詞、としています。(ただ、KANさんはこれ以降オリコン上位に入る作品をリリースしています。)
そしてカノン進行について以下のように述べています。(勝手に載せて申し訳ないです。)
「カノン進行を用いたヒット曲には『曲の効能を増幅させる力があるため、それ以降たとえ良い曲を作ったとしてもヒットに恵まれない可能性』も多分に含んでしまうのです。」
「ヒットしたことにより周囲の環境がガラリと変わって、同じような作品を望まれるプレッシャーの中で作曲者自身が葛藤に悩んでしまうことも多いでしょう。」
カノンというのはその曲自体がかなり美しすぎてしまうゆえに、その壁を乗り越える事が出来ないという罠が仕掛けられています。まさに「美しいバラにはトゲがある」ですね。
続いては歌詞。
マキタスポーツさんは、最近のJ-POPの類似性が高いのには、カノン進行で作られているだけでなく、歌詞にも似たフレーズが頻出している事も関係している、という現象を発見しています。
例えば「桜」。
3月とか4月になると「桜」がタイトルや歌詞に入った曲や、「桜」の季節=卒業式・入学式、になぞらえて「永遠の友情」、とか「再会の誓い」、とか「離れ離れになる前に告白」、とか「喧嘩もしたけどなんだかんだ言って私はみんなと一緒だったから楽しかった、ありがとう」とか。そういった物をテーマにして、そのような季節にヒットする事を狙った物が新曲として発表されています。
1ヶ月ぐらい前にミュージック・ステーションとかで「卒業のシーズンに聴く曲の紹介」とかそういうのがありました。私は斜に構えて見てました。他の人達は「あの曲良いよね〜」と共感するでしょうが、素直じゃない部分も兼ね備えて育った私は共感できない物があります。もしくは学生受けしてそれより上の年齢の人にはピンと来ないものもあるのでしょうが。
マキタスポーツさんは、桜ソングに関して果たしてウルッとした人達が増えたのか?という疑問・興味を持ち、この20年程のヒット曲に使われていたフレーズを1ページ大胆に使って紹介しています。
さすがにそれを載せると大変なので、その下に定型句をまとめていましたのでそれを載せたいと思います。
以下のように。
翼 扉 桜 夢 季節 奇跡 永遠 言葉 宝物 エール 強がり 弱虫 大丈夫 受け止める ありがとう 歩き出そう 大切な日々
どうです?
どの曲に具体的に思い出せなくても、そのような傾向はあると思うでしょう。
「愛」とかじゃないんです。「友情」とか「絆」とかその辺りのテーマが浮かぶ事でしょう上の太字を見れば。
そして上の太字に関して、その後に枕詞に当たる言葉を置くことで聴き心地の良いフレーズが出来る、としています。例えば、翼=広げる、桜=舞い散る、永遠=続く、エール=送るとか。
そのような歌詞ばかりの曲が蔓延してることについてマキタスポーツさんは、「J-POPは工業製品なのではないか」と仮説をうち立てます。
なんとも皮肉なものです。
桜は植物なのに面白おかしくたくさんテーマにされて学生たちの涙を誘っておきながらこのようにネタにされたり工業製品だとか言われたり、友情なんて友達が100人いれば100通り付き合い方とか他の人にはないものがもしかしたら生まれるかもしれないのに面白おかしくたくさんテーマにされてそれが薄っぺらいものに感じさせたりして。
それも音楽家や評論家ではなく芸人さんが仰ってるものですから笑ったり共感できたりして、この本は実に面白い。
まだ全部見終わってませんが、皆さんもこの本を見つけた際は是非最後まで読んでみてください。
超長くなりましたが、後半の洋楽和訳のコーナーです。
今日の洋楽
今日はトニー・オーランド&ドーンで幸せの黄色いリボンです。
トニー・オーランドは1944年4月3日ニューヨーク生まれ、ギリジャ人の父とプエルトリコ人の母を持つアメリカ人です。
1961年頃からスタジオシンガーとして活動していました。「Halfway to paradise」とか「Bless you」、「Beautiful Dreamer」を歌っています。
後に音楽を離れてCBSレコード系の出版会社で勤務したりしますが、「恋するキャンディダ」という曲のデモテープを作ったところ評判が良く、再びシンガーとして活動します。
この時にテルマ・ホプキンスとジョイス・ヴィンセントを迎えて「トニー・オーランド&ドーン」としてデビューします。
デビューしたはいいものの、幸せの黄色いリボンの前まではヒットがありませんでした。最初はボビー・ヴィントンやジェームズ・ダーレンに話が回っていたようですが、やはりトニーが歌った方が良いだろう、と渋るトニーを説得して歌わすことに成功しました。
トニーは、ボビー・ダーリンだったらどのように歌うのか、というのを意識して歌ったようです。
では和訳です。
I'm comin' home, I've done my time
Now I've got to know what is and isn't mine
If you received my letter telling you I'd soon be free
Then you'll know just what to do
If you still want me
If you still want me
刑期を終えて今帰ってるとこさ。
今僕は知らなくちゃ、君の気持ちを。
もうすぐ帰る、という手紙を受け取ったのなら、
やるべき事は分かってるだろう。
僕を待ってくれてたのなら。
Whoa, tie a yellow ribbon 'round the ole oak tree
It's been three long years
Do ya still want me (still want me)
古い樫の木にリボンを巻いておくれ。
もう3年たったけど、
まだ僕を愛してくれていたかい?
If I don't see a ribbon 'round the ole oak tree
I'll stay on the bus
Forget about us
Put the blame on me
If I don't see a yellow ribbon 'round the ole oak tree
もし樫の木にリボンが巻かれてなかったら、
そのままバスに乗って、
思い出は捨てるさ。
僕が悪いんだから。
もし樫の木に黄色いリボンが巻かれてなかったら。
Bus driver, please look for me
'cause I couldn't bear to see what I might see
I'm really still in prison
And my love, she holds the key
A simple yellow ribbon's what I need to set me free
I wrote and told her please
運転手さん、僕の代わりに見て欲しい。
そんな勇気僕には無いんだ。
僕はまだ罪人なんだ。
僕の恋人が鍵を握ってる。
黄色いリボンが僕を自由にしてくれる。
僕が手紙で頼んだんだ。
Whoa, tie a yellow ribbon 'round the ole oak tree
It's been three long years
Do ya still want me (still want me)
古い樫の木にリボンを巻いておくれ。
もう3年たったけど、
まだ僕を愛してくれていたかい?
If I don't see a ribbon 'round the ole oak tree
I'll stay on the bus
Forget about us
Put the blame on me
If I don't see a yellow ribbon 'round the ole oak tree
もし樫の木にリボンが巻かれてなかったら、
そのままバスに乗って、
思い出は捨てるさ。
僕が悪いんだから。
もし樫の木に黄色いリボンが巻かれてなかったら。
Now the whole damned bus is cheerin'
And I can't believe I see
A hundred yellow ribbons 'round the ole oak tree
そしてバス全体が喜びに包まれていた。
僕は信じられなかった。
たくさんの黄色いリボンが古い樫の木に巻かれていたんだ。
I'm comin' home, mmm, mmm
今帰るよ。
こんな感じです。
出所した男が、帰りを待っているなら樫の木に黄色いリボンを巻いてほしい、と家路につくバスの中で祈っていたらたくさんの黄色いリボンが巻かれていた、という幸せの歌です。
この歌をキッカケに山田洋次監督の映画作品「幸せの黄色いハンカチ」が作られました。
なんとも今の季節にぴったりの歌ではないでしょうか。
久々に長話になりましたのでこの辺でお時間でございます。土曜日は仕事になったので次は日曜日の更新です。
ではまた。
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